人と人が出会い、お互いが変容していく

 

認定NPO法人メタノイア代表 山田拓路さん

日本で暮らすさまざまな外国にルーツを持つ子どもたち。日本には約48万人以上存在すると推定され、
学校に通えていない、またはその恐れのある子どもたちも多く存在しています。

そうした子どもたちに向けて、日本語教室を開いて取り組む認定NPO法人メタノイアの代表である山田拓路さんに取材し、これまでの取組みからみえてきた一人ひとりに大切な意識や社会の課題についてお聞きしました。

認定NPO法人メタノイアとは

日本にはさまざまな理由でやってきた外国ルーツの子どもたちが暮らしています。親の事情でやってきたり、紛争や軍事侵攻によって祖国から逃れてきたり。そうした子どもたちは日本語がわからないから勉強についていけなくなってしまう。クラスだけでなく、地域のなかでも関係を築くことができずに孤独を感じてしまう。それぞれの困難を背景に行き着いた日本でもまた、言葉の壁や差別的な言動に直面し、自信も失くし、自分の将来が見えなくなってしまっている子どもたちの現状があります。外国ルーツのある子どもたちの数は年々増加する一方で、私たちの社会において子どもたちを支えるしくみはまだまだ十分とはいえません。私としても何の罪もない子どもたちの教育の機会や権利が保障されない社会に対して何かできることがあるんじゃないか―。そんな思いで、2021年にメタノイアを設立しました。外国ルーツの小中高生や若者を対象に、東京や埼玉を中心に日本語教室を運営していて、毎日あけている教室のほかに、オンラインでも場を開いています。

日本語教室

「居場所」とは言わないけれど

「どこにも属していない」と思うと、すごく不安になりますよね。大学生とかだと自分で関係をつくりにいかなければすぐ「孤独」みたいな空気がある。社会人だって、職場で同年代の人がいなかったら、どこで友達をつくればいいのって。でも、「居場所を支援してますよ」って言われるとプライドは傷つくし、そこに行きたいとは思えないですよね。支援されてしか生きていけないというのはすごく尊厳にかかわることで、自分の力で生きてるぞって誰しもが思いたいものではないでしょうか。

そんな考えもあって、私たちは運営する場所を「居場所」とは呼んでいません。けれども、まずは保護者等に見つけてもらう必要もあるので、「日本語教室」と打ち出しています。でもそこで大切にしているのは、日本語や勉強を教えるよりも、子どもたちの心に伴走すること。学校よりもゆるくて、同年代や同じルーツの子と出会い、母語でしゃべったり、ゲームをしたりできる場所です。教室にはボランティアとして中高生や大学生も関わってもらっていて。移民・難民として日本に来て孤立しやすい状況のなかで、同年代とかかわりを持てることがとても大事なんじゃないかと思います。そこで仲間として関係を築いたり、他愛もない話をしながら癒されたり。支援する/される、外国人/日本人とかそんな垣根を超えて、ここではみんな一緒に過ごして、笑顔になれる。そしてそれから先の人生を支え合える仲間がみつかる、そんな場をめざしてきました。

人と人とが出会って、お互いに変容していく

外国ルーツに対するヘイトが街頭やSNSでひどくなっていますよね。その中には嘘をついても取り締まられないものもある。子どもも、大人が言っているから事実だろうと思って、外国ルーツのある子と喧嘩になったときに「〇〇人嫌い」とか口にしたりするんです。民族でくくって「嫌い」などと言うことは、世界的に差別と認められています。そういう差別を、ナチュラルに子どもがしてしまっている。先生たちもそんなに敏感ではなくて、子どもが相談してもまともに対応してくれないこともあります。

こうした社会の流れを「世の中がなんとなく不安だから」だと言う人たちがいます。でも、その理由はもっと身近な場所にあるのではと私は思います。人と出会って関係性をつくるのは面倒。SNSや動画サイトで流れてくる無料のコンテンツをみんな見て、それをうまくハックして利用している人が優位に立つことはある意味当然の流れです。それに抗うのはかなり難しい。 でも、だからこそ、あきらめたくなくて。僕は日本語教室をつくる活動を通して、不幸な出会いを減らして、幸せな出会いを増やしていきたい。僕らがやるのは、何か支援するというよりも、出会いのきっかけとなる場づくり。そこで出会い、関わるなかでお互いが変容していけたらなと思っています。僕自身も子どもや若者と出会い、確かに変わっているんですよね。そうした関係性をどれだけ丁寧に紡いでいくかが大切だし、できればそれを社会に広げていきたい。日本の社会に生きる人と、日本に来たばかりの子どもたちが出会って、お互いに変わっていく。そんなきっかけを私たちが生み出せたらと。

「仲間がいるぜ」、「あきらめずに話しかけて」と伝えたい

外国ルーツの若者たちには、「同じように悩んでる仲間や先輩たちがいるぜ」と伝えたいです。日本語教室って最初は行きづらいと思うけど、うちは学校よりゆるいし、母語で一緒にしゃべって、好きな遊びをして笑えるような時間を一緒に過ごす仲間を見つけられる場所なので。そして「母語を喋ったり、仲間と一緒に過ごしたりするのがこんなに楽しいのか!」ってなってもらえたら嬉しいです。週1回でもそんな場があったら心が保てるんじゃないかな。そんな場があることをまずは知ってほしい。

そして日本人の子には、近くにいる外国ルーツの子に声をかけてあげてほしいなって。逆だったらやっぱりきついですよ。僕もカナダに住んだことがあって、地元の人に話しかけるのめっちゃ勇気がいりました。英語が話せないから、恥ずかしい目にあったらどうしようかとか。子どもだったら尚更そうですよね。いつも黙って下を向いているかもしれないけれど、それはしゃべりたくないんじゃなくて、しゃべれないから。外国語はできなくて当たり前なので、ぜひあなたからやさしく日本語で話しかけ続けてほしい。最初はもしかしたら拒否されたり、恥ずかしがって返事をしないかもしれないけれど、どうかたくさん話しかけて、遊びの仲間に入れて誘ってあげてほしい。スポーツとか音楽とか、遊びとか言葉でなくても通じあえるものを一緒にやったりして。とにかくあきらめずにずーっと話しかけてあげてほしいなって思います。

 

関連リンク

認定NPO法人メタノイアHP

「メタノイア」という団体名は古代ギリシア語で「視座を転換する」という意味。みんなが幸せを追求できる社会を築くため、この社会で幸せから遠ざけられている(抑圧のもとに生きる)人びとの願いにこそ耳を傾け、その望みが共感できるところへ視座を移したい、という願いが込められている。

https://metanoia.or.jp/index.html

 

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