どうしようもない想いをみんなで共有して 「大丈夫」と思えるように。 少年少女の隠れた居場所
認定NPO法人第3の家族 代表 奥村春香さん
虐待とまではいかないものの家庭環境に悩み、既存の支援制度からこぼれ落ちてしまいがちな“はざま”の子どもたち。そんな子どもたちを対象にあえて“寄り添わない支援”を続ける認定NPO法人第3の家族に取材し、その活動内容を通して見えてきた現代の子どもたちの姿や、“はざま”に生きる子どもたちへのメッセージなどをお聞きしました。
“寄り添わない”=直接的な支援をしないけれど「一人にさせない」
家族や学校、友人関係など、いろいろな悩みを抱えている現代の子どもたち。また、虐待は受けていないけれど、家に居場所がなく、悩みや傷ついた心を抱えたまま生きる子どもたちがたくさんいます。子どもたちが行き場のない悩みを気軽に吐き出せる匿名のコミュニティサイト「gedokun(ゲドクン)」を中心に、しんどさから抜け出したいと思った時に使える情報をまとめた「nigeruno(ニゲルノ)」など、サイトの運営を通じて子どもの支援を行っているのが認定NPO法人第3の家族です。
団体を立ち上げたきっかけは、「死にたい」と何度も思うほど家庭環境に悩んだことがあったから。さらに、弟の自死を経験したことから「私や弟のように家庭環境に悩む子どもたちを一人でも減らしたい」という想いで始めました。もともと絵を描くことやデザイン、ものづくりが好きだったので、大学3年生の時に試しにつくってみたのが「gedokun」です。

「gedokun」は匿名のコミュニティサイトです。返信機能はありません。リアクション機能はありますが、「わかる」「エール」の2つのみです。かつて私自身が家庭環境に悩んでいる時、いろいろなところに相談に行ったのですが、相談に入る前のステップがけっこう複雑だなと感じましたし、そもそもしんどい時にはそこまで辿りつくことが難しい。また、悩みによっては、すぐにどうしようもできない、虐待まではいかないので第三者から福祉的な支援を受けづらいケースもあります。「gedogun」はそんな状態の時でも使えるものにしたかったので、誰でも気軽に使えるシンプルなつくりにしています。一人ひとりのケースに対して相談を受けることはできないけれど、悩みを抱えた子どもたちに、今この辛い瞬間を気軽に話せて、「一人じゃないんだ」と思える裏の居場所のような存在になりたい。団体のもう一つのコンセプトを“寄り添わない支援”と言語化したのはそんな理由からです。
また、いざ行動しようと思っても情報を調べたりするのに苦労したという話を聞いたので、役に立つ情報をまとめたサイト「nigeruno」もつくりました。いろいろな支援団体の情報や、「手札」と称してセルフケアの方法などもまとめています。かつて当事者だった人の経験談や行き詰った時に読んでほしいコラムなども載せているので、少しでも「助かる道があるんだ」と思ってもらえたら嬉しいです。

子どもが「生きたいと思える社会」になってほしい
「第3の家族」では、活動を通じて見えてきた子どもたちの現状を調査し、各種学会やメディアなどで発信もしています。「gedokun」の投稿はすべて目を通していて、投稿は小学生から大学生までと幅広く、内容は家庭内不和、きょうだい差別、LGBTQなどが多くなっています。これらの投稿から共通して見えてきたのは、現代の子どもはやさしすぎるがゆえに自分を責めてしまう傾向があるということ。受験や学校生活で何かできないことがあったら、「自分はできない子だ」「いらない存在」と自分にナイフを向けてしまうケースが多くなっていると感じます。誰しもが抱えるであろう思春期特有の悩みやゆらぎを受け止められるところが昔よりも減っているのかもしれません。複雑化した社会のゆがみによるしわ寄せを子どもが引き受けていて、どうしようもない悩みを抱えた子どもが増えている印象です。
そんなゆらいだ想いを抱える子どもが「明日も生きてみるか」と思えるように、そして自分なりの落としどころを見つけられるように、これからも第3の家族では心の部分へのアプローチをし続けていきます。また、例えば地域での居場所をみつけるためのオフ会を開いてみるとか、「gedokun」を卒業したユーザーが情報提供をするしくみなど、家族や学校、地域といった「第1の家族」「第2の家族」とつなげていくために、「第3の家族」として何ができるか試行錯誤しながら、今ある機能をアップデートしていきたいです。
もっと人に頼っていい、立ち止まってもいい。後ろを向いても私たちがいます
ここを訪れた人の中には、「自分でなんとかしよう」と一歩踏み出している子もいるかもしれません。もっと周りに頼って、迷惑をかけていい。その中でいろいろな選択肢を知り、自分なりの落としどころや拠り所を見つけられるだけでも、少しは楽になるのではないでしょうか。競争社会の現代でずっと勝ち続ける、前進し続けなきゃいけないのは疲れますよね。時にはちょっと立ち止まり、後ろを向いてもいいと思うんです。休憩したり遠回りしたりしてもまた頑張れる社会、子どもたちが生きたいと思える社会になることを願っています。
