子どものころから絵を描くのが好きで、高校3年生の時にアニメーションを学ぼうと思い、美術大学に進学しました。そこではソフトウェアの使い方など専門的なことを学びました。その後、広くアートを学ぶためにイギリスの美術大学に留学することを決めました。主体的に自ら考え、リサーチを重ねて作品をつくっていく大切さを学びのなかで感じました。大学で学んだことは私の作品づくりのベースになっています。作品をつくる中で大切にしていることは、“自分の思いや感じたことをぶつけること”です。社会に対して抱いた悲しみや怒り、一言では表現できない複雑な思いを作品にのせて発信してきました。最近はそうした感情をぶつけるだけでは、それで終わりになってしまうと思うようになり、怒りの感情も抱きしめるような気持ちを持って、自分の作品と向き合うようにしています。日々のなかで起きた些細な出来事や生活の中にある葛藤を表現することで、鑑賞者と対話ができるような作品を作っていけたらいいなと思っています。

個人にスポットライトを当てれば魅力を感じられる

頃私たちが意識しないで通り過ぎてしまうキャラクターたちにスポットライトを当てて、作品づくりのベースにしています。例えば、アジアの商店街でひっそりと売っているおもちゃやお店のマスコットキャラクター、なんとなく顔に見える道路のシミなどです。私自身、こういうものに関心を抱いて絵を描いていくことが好きですし、そこから新しい発見もあります。不穏な空気をまといつつもユーモアにあふれたキャラクターたちを、作品を見てくれた方々にとっての味方のような、友達のような、あるいは自分自身のように感じてくれたら嬉しいです。そして、自分の作品を通じて「誰もが“ただそこにいる”だけで価値がある」というメッセージも受け取ってもらえたら。意識しないと通り過ぎて気づかれないようなキャラクターたちは、社会でそれぞれに生きる私たち自身や各々の感情に通ずるものがあるな、と感じる時があります。

そんな感情たちをキャラクターたちに重ね合わせてスポットライトをあてることで、本来彼らが持っている魅力を引き出すことができればいいなと思います。

 

ゆるく会話を楽しむGallery〇〇(ほにゃらら)

そうした作品づくりに加えて、山梨県北杜市の複合アート施設「GASBON METABOLISM」内に「Gallery〇〇(ほにゃらら)」を2024年11月オープンしました。これまでに私が発表してきた作品をはじめ、新たに制作した作品、Tシャツや作品集などのプロダクト、映像作品や立体作品を混在させて展示しています。毎月4日間限定でオープンしていて、作品だけではなく外装も常に更新し続けていく空間です。「Gallery〇〇」では、遊びに来てくれた方々と対話を楽しむことも心がけています。

私自身がなんとなく感じていたことですが、一般的にギャラリーというと敷居が高く、少し身構えてしまうことがあります。ここでは、作品こそありますが、それらやギャラリーとは全く関係のないお話などもしながら、ゆるく会話を楽しめる場所をめざしていけたらと思っています。作品がコミュニケーションの懸け橋になれたらいいなと。

何でもいいから生き続けることが大切

若者に関わる取組みに何か貢献したいと考えていたので、今回、若者向けの福祉サイト「わたしとふくしと」に掲載するイラストを描くというかたちで参加できたことを本当にうれしく思います。私の作品を見ることで、気持ちが少しだけ晴れたり、心にある何がしかのしこりから少しだけ離れる時間ができたらいいなって。作品を見て、感じたことを教えていただけたら嬉しいです。

若い時に将来のプランを決めなくちゃいけないような風潮がある中で、そのレールから一歩でも踏み間違えたら終わってしまうのでは、という不安を煽る空気感が社会にはありますが、そんな雰囲気を払しょくしていきたいです。私自身これまで色々なことを経験してきましたが、「どんなかたちでもいいから生きてみること」で、あらゆるものがゆるやかに好転していくことがあると実感しています。自分自身の思いや、なんとなく好きだな、良いな、と感じたことを自分だけの宝物にして大切に持ち続けながら、気楽に過ごしていってほしいなと願っています。

 

 

取材先情報

名称

添田奈那さん

自身の思いや気持ちをアートとして表現し、ギャラリーに訪れた人との対話を大切にしている添田さん。作品や社会への思いについて、お話を伺いました。

概要

添田奈那さんHP: https://www.nanasoeda.com/
Gallery ○○(ほにゃらら): https://www.pingpaling.com/gallery-honyarara
インスタグラム: https://www.instagram.com/wei_wawa/

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